05.30.01:46
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11.17.01:14
13
執務室から戻ると、長政が腕相撲のことを訥々と話しているところだった。
「掴んでいる気がしない。掴んでいるはずなのに。……心持が、しました。そういう」
「2度目は大丈夫だったのか?」
「はい。なぜか」
肩をすくめるようにして長政が言うと、政宗は小さく唸って腕を組んだ。
飲みなおそう、と言った政宗は野外のことを心得のある家臣数名に任せ、黒田親子を屋敷の一室に招き入れていた。肴は、いっぱいに広げられた何枚もの絵図と、いま片倉が持ってきた帳簿だ。
ちなみに黒田は鉄球付きで屋敷に上がるのを一応遠慮するような態度は見せたが、結局そのまま素知らぬ顔で上がり込んでいる。黒田が廊下を歩いて部屋に入り座るときまで延々聞こえてきた、不安を煽ってならない床の軋みのことは努めて忘れるようにしながら、片倉は帳簿を主に差し出した。
「お持ちしました」
「Thanks」
帳簿を受け取ると、政宗は軽く目を通してからそれを脇に置いた。
「悪いが黒田、さっきの件を小十郎にも話してやってくれ」
「やれやれ、二度手間だな……まあいいさ」
黒田は身を乗り出すようにして絵図を覗きこんだ。
「小生らがはじめに目指していたのは、上野と下野の国境だというのは言ったな」
「この辺りか?」
「そんなもんだ」
つられるようにして身を乗り出しながら、片倉が絵図に印をつける。
「何でここを目指してたのかと言うとな、誰かさんがここで網を張ってるって話を仕入れたからさ」
「網だと?」
「独眼竜から聞いたが……お前さんとこの斥候がやられたんだって?」
「斥候を狙い撃ちにするための網、と言いてえのか?」
「そう渋い顔しなさんな。やられた場所と合わん……とお前さんは言いたいんだろうが、そうじゃあない」
黒田はにやりと口角をつり上げた。
片倉は眉を顰めたまま、ここまでの出来事をぐるりと頭の中に並べた。並べた一つ一つに、今まで気づかなかった繋がりはないか。はたと思い当たるまで、そう時間はかからなかった。
「……政宗様、まさか」
「That's right」
大袈裟に腕を広げた政宗が、皮肉っぽく答えた。
「あいつら、伊達と豊臣を秤にかけやがった」
「使者に来たあの老将、食えぬ男とは思いましたが……これしき見抜けぬとは、不覚にございます」
「お前のせいじゃねえさ。オレも考えが甘かった」
「おい。勝手に納得してるところ悪いんだがな、小生はまだ話を終えてないんだぞ」
「Sorry, sorry. 続きを話してくれ」
自分抜きで話が終わりかけているのを見て不貞腐れ始めた黒田に、あやすような調子で政宗が言った。
「続きも何も、事情は大体わかったんだろ」
「そう言うなよ。ほら、Juniorが蚊帳の外になっちまってるじゃねえか」
「ぼく」
つくねんと座っていた長政が、突然の指名に慌てて居住まいを正す。
「名軍師の見立てってヤツを、倅にも聞かせてやっちゃどうだ」
「……そこまで言うなら、話してやるのもやぶさかじゃあないがね」
やや離れて座っていた長政が黒田の隣に寄ってくると、機嫌を直したらしい黒田は大仰に胸を反らしてから場を見渡した。
「結論から言おう。宇都宮はまだ豊臣と通じてる。がっちりとな」
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