05.30.14:17
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09.29.20:37
唐突に(略)④
「筆頭! 小十郎様! 斥候が戻りました!」
外へ飛び出した片倉は、血の気が引くのを感じた。肩を借り足を引きずりながら近づいてくる者。糸が切れたように座り込んでいる者。衣の赤黒さは泥にまみれたからではあるまい。さっと目を走らせる。足りない顔はすぐにわかった。主が横をすり抜け走り寄っていったのを追う。
「ひ、筆頭」
「よく戻った、仁助。無理に喋るんじゃねえ」
「すいやせん、こんなザマで……情けねえや」
「面目ねえっす……筆頭、小十郎様」
「文次、オメェもよく帰ってきた。命があってなによりだ。……おい、ボサッとしてねえで運べ!」
療養所に運び込まれた二人の兵は、疲弊してはいたものの傷は浅く、命に別状はないということだった。
「医者が言うには、手当てがよかったんだろうとさ。改めて礼を言うぜ、ありがとうよ」
「約定の件は聞き及んでおりました。当然のことをしたまでです」
政宗と片倉の前に座っているのは、文次に肩を貸していた男である。日に焼けた顔に、横一文字の傷があった。
「俺からも、お礼申し上げる」
「そう畏まってくださいますな、片倉殿」
「名を、お聞かせ願えますか」
「宇都宮家家臣・今泉高光と申します」
高光は南武蔵にある北条の支城へ所用で出向いた帰り、武蔵から上野に入る手前で仁助と文次を偶然見つけたのだという。高光が掲げていた宇都宮の巴紋を見た二人は、保護を願い出た。
「宇都宮城へ立ち寄り、怪我を癒してはいかがかと申したのですが、一刻も早く注進をせねばならぬとお二人が強く申されるのでな。そこで出来るだけの手当てをし、こうして馬を潰す勢いで駆けて参ったというわけです」
そう話す高光自身も、無理な遠駆けのためか、いささかやつれて見える。
「北条へは、どういった要件で?」
「北条の城と申しましても、いまあそこに留め置かれているのは豊臣の兵なのです」
「豊臣だと」
思わず政宗が声を荒げると、布団の中で文次が呻いた。
「政宗様」
「……Sorry. しかし、なんだって豊臣の兵がいま北条領に来てやがる。小田原城再建の人員は、北条方から出してるはずだろ」
小田原征伐の後、豊臣は北条を取り潰さず、戦で半壊した小田原城の修理を命じていた。作業に従事する兵や人足に禄を与えてはいるようだが、人員や資材の調達は北条方が全て請け負うかたちになっているともっぱらの噂であった。
「修理が始まって以降、豊臣方は作業の視察ついでに宇都宮・佐竹と顔を合わせる場を定期的に設けておるのです。それが此度は、南武蔵の八王子城にて行われました」
「豊臣は会合の度に兵を引き連れてきやがるのか」
「いえ、今までは少人数でした。軍勢を伴っておるのは、私も初めて見たのです。聞けば、小田原の本城にも多くの兵を留め置いていたとの由」
「なんと」
「しかしこちらは直接見たわけではありませぬ。……そちらのお二方が目覚められたら、聞かれるが宜しいかと。相模を抜けてこちらへ戻ってきたはずです」
「……ええ」
静かに眠る二人を一瞥し、片倉は口元を引き結んだ。命がけで情報を持ち帰ったのだ。厚く労ってやらねば。
「その会合ってのは、まさか豊臣秀吉が直々に来るわけじゃねえんだろう?」
何事か興味を抱いたらしい政宗が問うた。高光が小さく頷く。
「顔ぶれは回ごとにまちまちですが、先日お出でになったのは大谷刑部少輔殿でした」
次は刑部回です。
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