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なまもののさけび

とりあえずつらつらとかきつらねます

05.30.15:42
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  • 05/30/15:42

09.28.22:13
唐突に(略)③


「同盟を申し入れたき次第にございます」
「同盟だと?」
 僅かに身を乗り出した政宗であったが、高定は眉一つ動かさない。
「豊臣はどうした。小田原を忘れたわけじゃねえだろうに」
「豊臣は我らを見限る腹積もりにございましょう」
「話が見えてこねえな。アンタの主人が何かヘマでもやったのか?」
「他言無用を条件に、お話しいたします」
 見上げた根性だ。片倉は内心、舌を巻いた。敵大将を眼前にして、このふてぶてしさである。
「……構わねえな、小十郎?」
「政宗様のご随意にされるが宜しいかと」
「OK, 今から聞くことは漏らさねえ。誓ってだ。ワケを聞かせてもらおうじゃねえか」
 政宗と片倉、二人の視線が注がれる中、高定は極めて平坦な声で述べた。
「我が主、宇都宮広綱様……先達て、身罷りもうした」
「……What!?」
「なんだと」
 思わず片倉までもが声を上げていた。そんな情報はどこからも入ってきていない。
「我ら家臣一同、広綱様の逝去は固く伏せてございます。無論、大坂へも注進しておりません」
 二人の様子から察したか、高定が静かに続けた。
「しかし何処からか、豊臣方へと情報が抜けたようです。近頃なにかと理由をつけて、当主は大坂へ参上せよという書状を送ってくる。致し方なく、ご病気ゆえ参上し難しとの返答をしておりますが、見抜かれておりましょうな」
「内通者か」
「八方手を尽くしましたが、それらしき者は遂に見つからずじまいです。豊臣に始末されたという可能性もありましょう」
「宇都宮じゃなくて、佐竹から漏れた線は?」
「正直なところを申し上げれば、その公算は大でしょうな」
 恐ろしくあっさりと言ってのけた高定を見て、片倉は軽く目眩を覚えた。佐竹は宇都宮と縁戚に当たる、真っ直ぐと不器用が売りの勢力である。辛抱強く戦も上手いが、確かに情報戦には疎かろう。しかし高定にとっては、他ならぬ主君の縁者である。そんな佐竹を言外で評する高定の割り切り方は、いっそ清々しい。
「後継ぎはいねえのか」
「私が若君の後見を務めておりますが、いかんせん幼すぎる。そして私自身は決して若くない身でございます」
 豊臣軍は、なによりも力を尊ぶのが基本方針と言っても過言ではない。たとえ身内であっても、弱者には容赦のない面がある。同盟という一時の協力関係しか持たぬ者が相手であれば、言わずもがなであろう。
「豊臣が宇都宮を潰しにかかるのは時間の問題、ってことか」
「然様」
「佐竹のおっさんはどうしてる。両毛と北武蔵が豊臣に押さえられれば、佐竹もただじゃ済まねえはずだ」
 佐竹義重が領する陸奥南部と常陸は、伊達領と宇都宮領を隔てる土地である。佐竹もまた宇都宮と同じく豊臣に与する勢力ではあるが、隣国・伊達との境界争いはすれども、天下を狙って他国を積極的に攻める性質の軍ではない。そして宇都宮領を豊臣が接収すれば、佐竹領に手を伸ばすのは容易であろう。
「此度の同盟申し入れ、佐竹殿との合議にて決したものにございます」
「Ha! あの頑固者がな」
 武骨な鎧をまとい、大槍をふるう巨漢の姿を思い出しながら、政宗は不敵に笑む。
「鬼義重も、土地を取られちゃかなわねえってこった」
「我ら宇都宮と佐竹勢が北関東の押さえになっている限り、豊臣とて徒に北上はしますまい」
「OK, 事情は大体わかった」
 組んでいた腕を解くと、政宗はおもむろに立ち上がった。
「同盟、と言ったな」
「然様。貴国の下に入り手足となるのでなく、あくまで対等とさせていただきたい」
 平然と高定が言った。同盟を申し込む側が条件をつけようとする。しかも、いまの伊達に対して。片倉は思わず政宗の顔色を窺ったが、主は満足げに笑んでいた。
「いい根性だ。そうでなくちゃならねえ」
「了承頂けましょうか」
「Of course. アンタらと伊達は対等だ。お前もそれでいいな、小十郎?」
「はっ」
「……有難う存じます」
 整った姿勢のままで頭を下げた高定を見やり、武人として年経るならばこうしたかたちもひとつやもしれぬ、と片倉は頭の隅でふと思った。
「アンタらは一応、豊臣への義理立てもあるだろ? 伊達と繋がったとはおおっぴらに言えねえはずだ」
「佐竹殿もそれを気にしておいででした。ゆえ、我らは何かしらの事が起きるまで、約定を外へ漏らしませぬ」
「OK. こっちもそうさせてもらうぜ」
 それが互いのためだろう、と政宗は呟き高定の方へ進み出ると、目前に座した。片倉をちらりと見やる。無論、片倉も同意見であった。
「佐竹との連絡は、そっちに任せてもいいか。あそことは長年、直に事を構えるような間柄なんでね。うかつにcontactが取れねえ」
 先程までとは打って変わって、低く落とした声で政宗は言った。蒼い視線が、値踏みするように下から上へと動く。
「存じております。佐竹殿とて、危惧するところは同じかと」
 高定は動じない。やや目を眇めるようにして、この若い領主を見つめ返した。
「我ら宇都宮が中継ぎいたしましょう。今まで直接やりあう機会を持たなかったのが、不幸中の幸いでしたな」
「よく言うぜ」
 けろりとした顔で言ってのける老将を前にして、政宗は明朗に一声発すると、心底愉快そうに肩を揺らした。




まだまだ続きます。
高定さんは強か。

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