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なまもののさけび

とりあえずつらつらとかきつらねます

05.30.01:46
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  • 05/30/01:46

01.28.01:16
15


「は……?」
「陣羽織だよ」
「いきなり何を申されます」
「いいから」
 言いつつ政宗は自分も陣羽織を脱ぎ始めた。主が脱ごうというのでは、脱がざるを得ない。片倉が困惑しながらも陣羽織を脱ぐと、主の手が伸びてきてひょいとそれを取り上げた。そして代わりに、主の陣羽織が片倉に押しつけられる。
「……うわ、落ち着かねえなコレ」
 くしゃりと押しつけられた蒼い陣羽織を慌てて広げている片倉を尻目に、政宗はだいぶ丈の長い片倉のそれを羽織った。
「……政宗様」
「Ah? 何やってんだ。着ろよ」
「謹んで遠慮させて頂きます……」
「こんなときまで遠慮するこたねえだろ」
 政宗はさらりと言ってのけるが、片倉にとってはこんなときもなにもあったものではない。軽い目眩を覚えながら、主の陣羽織を丁寧に畳んだ。それと同時に主が何を意図していたのかを察し、呆れ気味に息をひとつ吐いた。
「……何もこうまでされずとも」
「わかりやすいじゃねえか。なあJunior?」
「取り替える、ということはわかりました。着ているものを、ですね?」
 目をぱちくりさせながら見ていた長政は、控えめに答えた。
「お前さんは勿論わかったろ」
「見かけだけ、ということだな」
「そういうことだ」
「Ha! あっちもこっちも化け比べか」
「宇都宮がやったような、ケチなもんじゃあないがね」
 黒田は勿体つけるように鎖を鳴らした。
「小田原、そして八王子にいたのは豊臣の兵じゃあない。豊臣兵の格好をした、北条兵だよ」
 奥州へ至る前、角土竜参號機が例によって急停止してしまい、相模の南部でやむなく地上に出た黒田は、もののついでにと小田原方面の様子を探った。するとそこで偶然、大勢の豊臣兵が北条兵に交じって作業している現場を目撃したのだ。事前に豊臣の西国出兵を把握していた黒田は不審に思い、しばらく観察を続けることにした。その後いっときは豊臣兵らしく隊列を組むなどしていたが、豊臣を知る黒田はその雰囲気に違和感を覚えずにいられなかった。さらに様子を見続けたところ、案の定それらは本物の豊臣兵ではなく、豊臣兵を装った北条兵であることがわかったのだ。
「おそらく、仕込みにはそこそこ時間をかけてるぞ、これは。会談を口実に来る時か、資材の中に紛れ込ませてかはわからんが、豊臣の一般兵とそっくり同じ装束を、こっそり運びこんでおいたんだな。都合のいいことに、最近の小田原はそこら中が作業場だ。大荷物を運んで置いておくのも、急ごしらえの陣屋もどきを建てるのにも、苦労しなかったろうよ」
 人間を用意しなくていいだけ簡単とも考えられるが、装束を大量に揃えるというのも、多くの資金や保管場所が必要になる。規模の大きい豊臣だからこそ、実行できた策とも言えよう。
「しかし、そうなればますます豊臣は、宇都宮に助力する気なんざ更々ねぇということになるな」
「だから言ったろう、お前さんの推量を裏付けてやると」
 小田原に兵が集まっていると思えば、宇都宮は安心して「豊臣に攻められている」ことを口実に伊達を自領までおびき出すに違いない。伊達もまた、豊臣が小田原にいるという情報を自軍の斥候が持ち帰ってきたとなれば、豊臣の宇都宮攻めを信じざるを得ない。宇都宮領まで伊達が南下してくれば、あとは双方のぶつかり合いだ。戦局がどう転ぶにせよ、豊臣の筋書き通りになる。
「斥候を襲っておきながら生きて帰したのも、伊達に誤報を掴ませるため……か」
 未だ療養所にいる二人の顔を思い浮かべながら、片倉は歯噛みした。
「あの怪しい書状が届いたから、斥候を出したわけだが……敵さんの思う壺だったってことだ」
 政宗は組んでいた腕を解き、羽織っていた長い陣羽織を脱いだ。すかさず片倉がそれを受け取り、主のものを差し出す。
「書状を持ってきたのも、宇都宮と考えてよさそうだな」
「大元の指示がどこから出たかは知れませんが、おそらくは」
「あ、その件なんだがな、お二人さん」
 思い出したように、ふと黒田が言った。
「ほれ、網を張ってるって話をしただろう。その続きをまだ話してなかったな」
「What? 宇都宮のことならもう話したじゃねえか」
「いや、そうじゃない。お前さんにもこれはまだ説明してないぞ」
政宗と片倉は顔を見合わせた。
「倅、お前さんにあれを預けたな? 出してくれ」
「あれですか」
「あれだ」
 長政は立ち上がると、腰に巻かれていた擦り切れ気味の帯をくるくると解いた。すると、中にしまいこまれていた平たい紙包みが、軽い音をたてて床に落ちた。
「これですか、あれとは」
「そう、これだ。……今回は事情が事情だからな、特別に見せてやるよ」
 長政は包みを拾い上げると、政宗に手渡した。政宗は受け取った包みをしげしげと眺め、開けた。
「……!」

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