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なまもののさけび

とりあえずつらつらとかきつらねます

05.26.18:24
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  • 05/26/18:24

01.27.00:48
分岐器


又兵衛ドラマルート前提の妄想文。
ドラマルートしかやってない&完全に思いつきで書いていますのでご注意ください。







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 その男は、線路の上を歩いていた。
 心身ともに疲弊しきった男の足取りは頼りなく、背中を丸めてふらふらと歩いていく様子は痩せて手足ばかり長い姿と相まって、男の細長い影をより貧相なものにしていた。
 男はその陰気な顔つきとは裏腹に自信家であり自尊心が強く、またそれなりの実力も伴っていた。だからこそあの日、上から発された待機命令を素直に飲み込むことを良しとせず、自身の分隊のみを率いて先駆けることを選択し、結果戦線からほうほうのていで離脱するという無様を晒す羽目になったことで、上司からは叱咤され同僚からは冷笑され部下からは軽蔑され、数少ない持ち物の一つであり後生大事に抱えてきた自尊心を砕かんばかりに傷つけられたばかりか、その自尊心がゆえに己の責を甘んじて受け入れることすらも難しく、己の膝を地につかせたあの日の相手を忘れ得ぬようにと帳面に記し、ただひたすらに憎んだ。
 ふと視線を巡らせると、自分の他にも線路の上を歩いている者が見えた。同じ線路の上ではなく、隣に並べて敷かれた別の線路であった。歩いている者の姿をよく見てみれば、それは己と瓜二つの男であった。その向こうにも線路があり、やはり己と同じ姿の男が歩いていた。そのさらに向こうにも、やはり同じであった。同じ姿の男たちは、並べて敷かれた線路をそれぞれ歩いているのであった。しかし他の男たちは隣の線路に気が付いていないようであった。男は立ち止まり、己が歩いてきた道のりを振り返った。振り返り、そのまま線路の上を元来た方へと走りだした。やがて、線路の分岐するところまで男は引き返してきた。男は自分が分岐の片方を選んだ記憶などなかったが、さっき見た他の男たちの姿を思い出し考えた。
 この分岐の向こう側を選び直せばよいのではないか。
 何の根拠もなかったが、そうすれば全てが元に戻り全てが上手くいくような気がした。
 そこまで考えて初めて、男は線路の外からこちらを眺めている人影に気が付いた。人影は男とは違った姿をしていた。ひどく驚いた顔をしたその人影は、男に向かって何か言ったようだったが、男の耳にその声は届かなかった。
(なぜ戻ってきたのだ、朋よ)
 男はその人影の背後に、黒々とした虚空に漂う無数の輝く点と、時に青白く時に赤黒く燃える光の渦たちを見た。人影はもう一度何かを、今度は叫んだようだったが、男の耳にはやはり届いていなかった。
(見てはいけない、心を焼かれるぞ)
 男の眼前で、闇が炸裂した。

 目覚めたとき、男は「やりなおす」ことを考えていた。
 同じ場面で違う結末を選ぶことができれば、違う線路を走ることができるはずだと、男は考えていた。どうすればやりなおすことができるのか、男はしばしそれを考えていたが、考えれば考えるほど当初の目的が霞んでいき、男がやっと考えをまとめた時には、憎んだ相手をいかに惨たらしく惨めな目に遭わせ場合によってはこの世から消し去るか、それが目的になっていた。焼き切れてしまった心を無理矢理継ぎ合わせてできた回路では、まともな思考など到底望めなかった。怪鳥のごとき甲高い声で気が触れたかのようにひとしきり笑うと、男は帳面と筆を手に取り背中を丸めながら愛おしげに表紙をひと撫でして、「又兵衛閻魔帳」と記した。


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