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なまもののさけび

とりあえずつらつらとかきつらねます

05.28.01:21
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  • 05/28/01:21

04.19.00:24
直江さん、石田さんに出会う。


地方大学日奇帳番外編、無敵外伝(仮)の第0話です。
「ふしぎなものの存在は全く関知できない」という直江さんが主人公。





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「受付へ行って、石田さんに取り次いでほしいと言うんだ。先方は承知してるから、あとは言われた通りにすりゃいい」

 先生が俺に頼みごとをするのは珍しい。よく姉小路が何か頼まれているのを見かけるが、なぜか今日呼び出されたのは俺だ。しかも詳しい用件を教えてくれない。何をしてくればいいのかと聞いても「会えばわかる」としか言わなかった。不思議だ。
「T大学の方ですね。こちらでお待ちください」
 受付で用件を告げると、座り心地のよさそうなソファがある部屋に案内された。応接室というやつのようだ。ソファとテーブルがあるだけで、他には何もない。かなり殺風景だが、普通こういうものなんだろうか。俺はもっとものがたくさんある、小学校の校長室のような部屋を想像していた。
 いや、よく見たらソファに何か丸っこいものが乗っている。クッションだろうか。
「さがっていろ。客だ」
 ふいに後ろから声がしたかと思うと、丸っこいものに尻尾が生え、手足が生え、ソファから飛び降りると俺の脇を音も立てずに歩いていった。クッションだと思ったのは、ふさふさした毛の猫だった。
「この時期は毛が抜けてかなわん」
 声の主は、猫とすれ違うようにしてツカツカと歩いていき、ソファに腰掛けた。足を組んで座ってもわかるくらい、背の高い人だ。そしてかなり痩せ身だ。年はよくわからないが、綺麗に整えられている髪は白い。でも真っ白というわけではなく、光の加減ではごくごく薄い紫がかった灰色にも見えるような気がする。こちらを向いている面長の顔も、全然陽に当たってないんじゃないかと思うくらい白い。
 そうやって思わずまじまじと眺めてしまい、失礼だったかと少し慌てたが、相手は眉一つ動かさない。見られていることなんて、気に留めてもいないようだ。
「着席しろ。直立したままで結構というなら別だが」
 ……いきなり命令口調で喋りかけてくる人って、なかなかいないよな。
 なんか毛利先生っぽいなこの人。とりあえず座るけど。
「何と聞かされてきた」
「会えばわかる、としか聞いてません」
「私の名は」
「……石田さん、ですか?」
「何故疑問系になる」
 訝るような顔をされてしまった。
「違うかもしれないし」
「私は石田だ。それ以外に名乗る名はない」
 じゃあ、はじめからそれだけ答えてくれたらいいのに。
 はあ、と言いそうになったのを我慢する。
「相槌の打ち方に文句をつけるつもりもない」
 ばれてた。
「貴様も名乗れ。上だけで構わん」
 貴様って言う人を毛利先生以外で初めて見た。
「直江です」
「直江か」
「直江ですよ」
「その口調を止めろ」
「え」
「私の下に貴様を置くわけではない。対等に会話しろ」
「かなり上から喋られてる気が……」
「私のこれは癖だ。気にするな」
「どんな癖だよ!」
「それでいい」
 意味がわからない。
「私のことは石田と呼べ、直江」
 でも、堅苦しくしなくていいのはありがたい。
「では給金についてだが」
「え」
 変な声を出してしまった。給金? 何の話だ。
「何だ」
「俺、まだ何も聞いてないぞ」
「寝惚けたことを言うな。あれにバイトの斡旋をされて来たのだろう」
「え!?」
 あれ、というのは先生のことだろう。そう言われてみれば、確かに相談した覚えはある。けどここでバイトするなんて聞いてない。
「……元親め。また適当な学生を放り込んできたのか」
 石田さんは眉間に皺を寄せながらブツブツ言うと、足を組み直した。
「また?」
「貴様の前任の話だ」
 前任がいたのか。
「3日で音を上げて逃げ出したがな」
「帰る」
「案ずるな、見たところ貴様は適任だ」
「だから何のバイトなんだよ!?」
 3日でやめたくなるようなバイトって、一体どういうことなんだろうか。石田さん自身のことも含めて、あまりにも得体が知れない。
「追々説明してやる」
「なんで今してくれないんだ……」
「じきにわかる」
「出来れば今知りたい」
「丸一日かかるが」
「なんで!?」
「また明日来い。明日は休館日だ、鍵を渡しておく。裏の通用口から入れ。中で迷うような馬鹿ではないと信じているが……万一迷ったときは、刑部に聞け」
わけがわからない。
 石田さんは、上着の内ポケットから鍵を取り出すとテーブルに置き、俺の方に押して寄こした。これを受け取ったらバイト決定、いや、俺が受け取る取らない以前に、もう俺はここで働くことが決まってしまっているのだ。だったら、仕方ないじゃないか。やり始めれば、案外なんとかなるのかもしれない。何しろ俺は無敵だ。やってみなければわからない。
 俺は鍵を受け取り、鞄にしまった。石田さんはそれを見ると、もう話すことはないと言いたそうな顔をして黙ってしまった。それにしても本当に色の白い人だな。そればかりに目がいってしまって、ちょっと困る。
「一個だけ聞いていいか……?」
「何だ」
「刑部って……誰だ?」
 石田さん、いや石田は、そこで初めて少しだけ笑った。
「来ればわかる」
 そんなことだろうと思った!


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