05.28.01:21
[PR]
03.11.17:43
アンソロ寄稿作品サンプル
2014年5月5日開催の第18回文学フリマにて頒布予定の歴史小説アンソロジー『あたらしい歴史教科書:日本史C』に寄稿した作品のサンプルです。
おやこ六弥太
死んだものを弔うための手段の一つに、墓をつくることがある。死んだものの体をどうにかして埋めておくのが主だが、時には墓の下に何もないということもある。埋めたら埋めたで、そのまま埋めっぱなしということもあるが、土を盛るなり、石で造ったものを置くなり、何かしらの目印をつくることが多い。石で造ったものの中には、それそのものが死体を入れておく容器の役割を果たす場合もある。こういった墓の目印、ひいては墓そのものは、葬られたもの自身が特別であればあるほど、特別な意味を持つ。力を持った者が葬られた墓は、その墓石さえも力を持つと考えられることが、ままある。
たとえば、畑の真ん中に建っているこの石塔も、特別な意味を持たされた墓石である。この石塔を削り取って粉にし、それを煎じて女が飲めば、子を持たない女は間もなくして子を授かり、子があっても乳の出が悪い女はたちまちに乳の出がよくなるという。付近の村々では長きにわたって信じられていた話であり、妙薬に等しいものとして何度も削り取られてきた石塔は、不自然にへこんでいる。
ここに葬られている人物は、いつ生まれいつ死んだのかよくわかっていない。はっきりわかっているのはこの辺りに住んでいたということ、保元の乱と平治の乱そして一ノ谷の戦いに参加していたこと、などである。
PR
- トラックバックURLはこちら

