05.29.04:48
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12.14.13:57
執筆順リク小説その2
リクエストありがとうございました。
久々の教師パラレル。
校長&社会科主任、満を持して登場!
と言いつつほとんど校長のターン(笑
何か無駄に長いです。
「放送室のブラックボックス」
「……何だろ、これ」
"それ"は、静かに机に鎮座していた。
朝の日課、本日の予定確認。
職員会議。学園本部への書類の提出。窓拭き。植木の手入れ。家庭科室の換気扇掃除。体育館の天井の鉄骨部分に挟まったバレーボールの回収。体育館の天井の鉄骨部分に挟まったバスケットボールの回収。体育館の天井の鉄骨部分に挟まったバドミントンの………
以下略。である。
そんなことがぎっしりと、途中からは明らかに自分以外の何者かの筆跡で手帳に書かれているのを見て、沢田綱吉は赤くなって、青くなって、溜息を吐いた。こんなことをするのは、学園本部の人間を除けばこの学校では一人しか思い当たらない。
「リボーン……」
副校長・リボーン。
現校長・沢田綱吉の恩師にして学校きっての鬼教師。
喧嘩を売ってはいけない教職員ベスト3に堂々のランクイン。
恐ろしいあだ名や二つ名、学園黎明期の伝説的所行は枚挙に暇がない。
要するに、教師としては非常に優秀で、人望もあるのだが、物凄く、怖いのである。とりあえず怖いのである。副校長というポストについているため実際に教鞭を執っているわけではないが、怖いのである。静かなる恐怖と言おうか、沈黙する大災厄と言おうか、怖いのである。
が、どういうわけか生徒には人気がある。
怖いことを認識されつつも生徒からは好かれているのである。
まったくもって恐ろしい人材である。
そんな恐ろしい人物兼自分の恩師が手帳に書き加えた予定を無視したら一体どういう結果が待っているか、想像もしたくないというのが本音であった。ちなみに懸命な読者諸氏のご推察の通り、予定書き加えくらい日常茶飯事である。
手帳をぱたんと閉じ、深く溜息を吐いて、綱吉は椅子から立ち上がった。
机周りに常に置いてあるバケツと雑巾を持つのも忘れずに。
ついでに確認しておくと、沢田綱吉の肩書きは「校長」である。一応。
職員会議のあと学園本部への書類の提出を急いで済ませ、迅速かつ丁寧に窓拭きをし、脚立が崩れるんじゃなかろうかという不安に駆られながら植木の手入れをし、住宅用洗剤と闘いながら家庭科室の換気扇掃除をし、絶対下を見るなと自分に言い聞かせながら体育館の天井の鉄骨部分に挟まったバレーボール、バスケットボール、バドミントンのシャトルを回収し………
「……さ、最後の一個……」
やっとこさ全部取り終えたときには、すでに放課後だった。数を数えて、全部揃っていることを確認すると安堵で腰が抜けそうになった。冗談でなく。
「よかった…もう何もなかったはず…………」
作業着のポケットから手帳を引っ張り出してめくり、綱吉はげんなりした。
もう一つだけ、仕事が残っていたのである。
「ええと…放送室から昨年度の『三年生を送る会』で使ったDVDを持ってくる………ほ、放送室かあ……」
疲れた笑いを漏らしつつ、綱吉は少々青ざめた。
正直、あの部屋には出来るだけ近づきたくない綱吉である。日の高い日中ならいざ知らず、日も暮れかけた放課後に一人であの狭い部屋に行きたくはなかった。
理由は至極シンプルで、「出る」噂があるからである。
校舎の増改築が激しかった時代を経て今に至るために結構謎な構造をしているこの学校の校舎の中でも、放送室は極めて辺鄙な場所に設置されていた。「陸の孤島」の体育教官室といい勝負である。おまけにその目の前の廊下には、理事長の趣味だか何だか知らないが仏像が置いてあるのである。はっきり言って、怖い。
『何を言う綱吉、仏様が悪いことをするわけがないだろう。案ずるな』
とは理事長その人のお言葉だが、怖いものは怖いのである。が、これをやらずにおいてあの鬼副校長の制裁を受ける方がよっぽど怖い。どっちに転んでも怖いなら、まだ仏様の方が望みがあるように思えた。
廊下の電灯がついていることに多少なりとも心強さを覚えつつ、にこやかに目を細めている仏像と目を合わせないようにして前を通り過ぎ、放送室のドアを開けた。そして目に入ったのは————
「……何だろ、これ」
で、冒頭に戻るのである。
放送機器や資料などで埋め尽くされた狭い室内にある唯一の机の上に、"それ"はぽつんと取り残されたように置いてあった。
「…わ、なんかいっぱい入ってるよ……何の資料なんだろう」
近づいて覗き込んでみると、真っ黒いその箱の中には、ファイリングされた何かの資料や、今や懐かしのカセットテープ、CD、DVDなどがごちゃごちゃと突っ込まれていた。箱の側面のラベルに『出したら戻す!』と書かれているのを見ると、どこかにしまってあったものらしい。誰かが探し物をしていて、ここに置きっぱなしにしたのだろうか、などと考えていると
「あ、これって……」
雑多な資料のラベルやナンバーをそれとなく見ていた綱吉は、自分の目当ての物を発見した。昨年度の『三年生を送る会』用映像のDVD。ファイルの隙間に上手い具合に挟まっていた。それを取り出そうとして、ファイルごと箱から出した綱吉だったが、ふとその手が止まる。
そのファイルには『極秘』『没原稿』『門外不出』『持ち出し厳禁』などと、人間の好奇心をくすぐらずにおかない言葉がでかでかとラベリングされていた。当然、綱吉も例外ではない。さっきまでの恐怖感はどこへやら、今はこの手に持ったファイルの中身が気になって仕方なくなってきた。
「……見るな、とは書いてないよね」
人間は、こういうときはとても自分に都合の良い解釈をする頭になる。
DVDのケースを一旦机に置き、綱吉はファイルをそっと開いた。
『第68回三年生を送る会 クイズ企画書 没』
一枚、めくってみる。
『私は誰でしょうクイズ』
これは確か、毎年恒例の企画だったはずだ。教師の若かりし頃や幼かりし頃の写真を堂々公開、誰のものなのかを当てるという『送る会』のメインイベントの一つである。文面を見る限り、どうやらその進行の草稿と出題写真の候補らしい。そして今これが「没」とされているということは、本番では公開されていない写真ということではないだろうか。内心ワクワクしながら、もう一枚めくってみた。
『第一問 私は誰でしょう』
写っているのは、真面目な顔をして竹刀を組み立てている銀髪の子供。
短い後ろ髪がぴょんぴょんと跳ねている。
『正解:S・スクアーロ先生』
「今とおんなじことしてる……」
髪型が違う事以外はまったく変わっていないらしい剣道部顧問の姿を思い出しつつ、もう一枚めくる。
『第二問 私は誰でしょう』
写っているのは、可愛らしいイルカのぬいぐるみを抱えた男の子。
面影、と言うよりは今とほとんど変わらないその表情。
『正解:バジル先生』
「うわあ、いつのだろうこれ……幼稚園とか?」
バジルとは中学時代からの旧知だが、ここまで幼いときの写真は目にしたことがなかった。次のページを期待しつつめくる。
『第三問 私は誰でしょう』
写っているのは、着物姿で座っている黒髪ツリ目の子供。
この澄ました顔、どこかで見たことがある気がするのだが。
「……あれ?」
思わず声を上げてしまったのは、正解の書かれているべき欄が黒く塗りつぶされてしまっていたからだった。裏から透かしても見えないように修正液ではなくマーカーで塗りつぶしてあるところが憎い。期待を裏切られたような気分になりつつ、仕方ないので次のページへ。
『第四問 私は誰でしょう』
「…………」
めくんなきゃよかった、と綱吉は後悔した。
写真の中で、栗色の髪の子供が犬に顔を舐められて半泣きになっていた。
どっから持ってきたこんなの…と内心毒づきながら、見なかったことにして次のページをめくった。
『第五問 私は誰でしょう』
写っているのは、腕いっぱいの花束を抱えた子供。
服装はよくわからないが、ぱっと見では女の子に見える。
しかし、誰だろう、と思考を巡らせるが思い当たる人物がいない。
『正解:桔梗さん(購買部)』
「へえー……って、ええええええ!?」
あの化粧を落として小さくしたらこうなるのか、と思ったが口には出さなかった。何で購買部の人の写真載せてんだよ許可取ってるのかよとかは突っ込むのをやめた。そしてページをめくった。次が最後らしい。
『第六問 私は誰でしょう』
写っているのは、黒髪の子供。
大きなウサギのぬいぐるみを抱いて眠っている。
ウサギの耳をしゃぶっているあたりが、何とも幼く愛らしい。
誰だろう、と正解を見ようとして————見られなかった。
肩越しににゅっと伸びてきた手が、綱吉の手からファイルを取り上げていた。
「…え……」
冷や汗。
ぎこちない動きで首を後ろへ捻ると————
「……見たな……………」
廊下の窓からの夕日で逆光になった、背後に佇む黒い大きな影……その紅い双眸がこちらを睨んでいた。
「………ぎゃああああああああああああああ!!!!!!!!!」
暗転。
———その後の顛末。
悲鳴を聞いて飛んできた獄寺が目にしたのは、失神した綱吉と、苦い顔でそれを見下ろしている社会科主任——XANXUSだった。
「おい、何があったんだよ?」
「こいつが俺見て勝手にぶっ倒れやがったんだ」
ムスッとした顔で、倒れてピクピクしている綱吉を顎でしゃくる。
「はあ?」
釈然としない顔をしつつ、とりあえず綱吉を助け起こす獄寺。揺すってみたが、目を覚まさない。
「十代目? 十代目……駄目だ、完全に気絶してる」
「保健室に預けてくればいいだろう」
「じゅうだいめ〜? ……仕方ねえか」
頬をぺちぺちと叩きながら呼びかけていたが、依然として気絶したままの綱吉をよっこいせと背負うと
「……もしかして十代目…それを?」
XANXUSが持っていたファイルを見て、言う。XANXUSは答えない。
「それ、確か雲雀権力で没になったんだよな。理事長は残念がってたらしいけど」
「…何で知ってんだよ」
「山本から聞いたんだよ」
「何であいつが知ってやがる……」
「スクアーロに聞いたとか言ってたけど」
「……あンのカスザメ……」
不動明王顔負けの表情でファイルを握りしめるXANXUSから目を逸らしつつ、心の中でスクアーロに合掌してから、綱吉を落とさないようにと背負いなおした。
「あー…まあ、別にいいんじゃねえの? ウサギのだろ? お前、フツーに可愛——」
「てめえも保健室行くか?」
「いや、遠慮しとく」
そこまでムキにならなくても、と内心可笑しく思いつつ、ウサギのぬいぐるみを抱いていた子供の成長した姿を一瞥してから放送室を出ていった。
「…………」
取り残されたXANXUSは、ファイルをもとの黒い箱に放り込み、それを棚の一角に乱暴に押し込んで、放送室のドアを閉めた。
「……誰が可愛いだ…!」
放送室の机の上にDVDを放置したまま気絶してしまい、結局取ってこられなかった校長先生が、にこにこしながら迫ってくる鬼教師から学校中を逃げ惑ったのはまた別のお話。
久々の教師パラレル。
校長&社会科主任、満を持して登場!
と言いつつほとんど校長のターン(笑
何か無駄に長いです。
「放送室のブラックボックス」
「……何だろ、これ」
"それ"は、静かに机に鎮座していた。
朝の日課、本日の予定確認。
職員会議。学園本部への書類の提出。窓拭き。植木の手入れ。家庭科室の換気扇掃除。体育館の天井の鉄骨部分に挟まったバレーボールの回収。体育館の天井の鉄骨部分に挟まったバスケットボールの回収。体育館の天井の鉄骨部分に挟まったバドミントンの………
以下略。である。
そんなことがぎっしりと、途中からは明らかに自分以外の何者かの筆跡で手帳に書かれているのを見て、沢田綱吉は赤くなって、青くなって、溜息を吐いた。こんなことをするのは、学園本部の人間を除けばこの学校では一人しか思い当たらない。
「リボーン……」
副校長・リボーン。
現校長・沢田綱吉の恩師にして学校きっての鬼教師。
喧嘩を売ってはいけない教職員ベスト3に堂々のランクイン。
恐ろしいあだ名や二つ名、学園黎明期の伝説的所行は枚挙に暇がない。
要するに、教師としては非常に優秀で、人望もあるのだが、物凄く、怖いのである。とりあえず怖いのである。副校長というポストについているため実際に教鞭を執っているわけではないが、怖いのである。静かなる恐怖と言おうか、沈黙する大災厄と言おうか、怖いのである。
が、どういうわけか生徒には人気がある。
怖いことを認識されつつも生徒からは好かれているのである。
まったくもって恐ろしい人材である。
そんな恐ろしい人物兼自分の恩師が手帳に書き加えた予定を無視したら一体どういう結果が待っているか、想像もしたくないというのが本音であった。ちなみに懸命な読者諸氏のご推察の通り、予定書き加えくらい日常茶飯事である。
手帳をぱたんと閉じ、深く溜息を吐いて、綱吉は椅子から立ち上がった。
机周りに常に置いてあるバケツと雑巾を持つのも忘れずに。
ついでに確認しておくと、沢田綱吉の肩書きは「校長」である。一応。
職員会議のあと学園本部への書類の提出を急いで済ませ、迅速かつ丁寧に窓拭きをし、脚立が崩れるんじゃなかろうかという不安に駆られながら植木の手入れをし、住宅用洗剤と闘いながら家庭科室の換気扇掃除をし、絶対下を見るなと自分に言い聞かせながら体育館の天井の鉄骨部分に挟まったバレーボール、バスケットボール、バドミントンのシャトルを回収し………
「……さ、最後の一個……」
やっとこさ全部取り終えたときには、すでに放課後だった。数を数えて、全部揃っていることを確認すると安堵で腰が抜けそうになった。冗談でなく。
「よかった…もう何もなかったはず…………」
作業着のポケットから手帳を引っ張り出してめくり、綱吉はげんなりした。
もう一つだけ、仕事が残っていたのである。
「ええと…放送室から昨年度の『三年生を送る会』で使ったDVDを持ってくる………ほ、放送室かあ……」
疲れた笑いを漏らしつつ、綱吉は少々青ざめた。
正直、あの部屋には出来るだけ近づきたくない綱吉である。日の高い日中ならいざ知らず、日も暮れかけた放課後に一人であの狭い部屋に行きたくはなかった。
理由は至極シンプルで、「出る」噂があるからである。
校舎の増改築が激しかった時代を経て今に至るために結構謎な構造をしているこの学校の校舎の中でも、放送室は極めて辺鄙な場所に設置されていた。「陸の孤島」の体育教官室といい勝負である。おまけにその目の前の廊下には、理事長の趣味だか何だか知らないが仏像が置いてあるのである。はっきり言って、怖い。
『何を言う綱吉、仏様が悪いことをするわけがないだろう。案ずるな』
とは理事長その人のお言葉だが、怖いものは怖いのである。が、これをやらずにおいてあの鬼副校長の制裁を受ける方がよっぽど怖い。どっちに転んでも怖いなら、まだ仏様の方が望みがあるように思えた。
廊下の電灯がついていることに多少なりとも心強さを覚えつつ、にこやかに目を細めている仏像と目を合わせないようにして前を通り過ぎ、放送室のドアを開けた。そして目に入ったのは————
「……何だろ、これ」
で、冒頭に戻るのである。
放送機器や資料などで埋め尽くされた狭い室内にある唯一の机の上に、"それ"はぽつんと取り残されたように置いてあった。
「…わ、なんかいっぱい入ってるよ……何の資料なんだろう」
近づいて覗き込んでみると、真っ黒いその箱の中には、ファイリングされた何かの資料や、今や懐かしのカセットテープ、CD、DVDなどがごちゃごちゃと突っ込まれていた。箱の側面のラベルに『出したら戻す!』と書かれているのを見ると、どこかにしまってあったものらしい。誰かが探し物をしていて、ここに置きっぱなしにしたのだろうか、などと考えていると
「あ、これって……」
雑多な資料のラベルやナンバーをそれとなく見ていた綱吉は、自分の目当ての物を発見した。昨年度の『三年生を送る会』用映像のDVD。ファイルの隙間に上手い具合に挟まっていた。それを取り出そうとして、ファイルごと箱から出した綱吉だったが、ふとその手が止まる。
そのファイルには『極秘』『没原稿』『門外不出』『持ち出し厳禁』などと、人間の好奇心をくすぐらずにおかない言葉がでかでかとラベリングされていた。当然、綱吉も例外ではない。さっきまでの恐怖感はどこへやら、今はこの手に持ったファイルの中身が気になって仕方なくなってきた。
「……見るな、とは書いてないよね」
人間は、こういうときはとても自分に都合の良い解釈をする頭になる。
DVDのケースを一旦机に置き、綱吉はファイルをそっと開いた。
『
一枚、めくってみる。
『私は誰でしょうクイズ』
これは確か、毎年恒例の企画だったはずだ。教師の若かりし頃や幼かりし頃の写真を堂々公開、誰のものなのかを当てるという『送る会』のメインイベントの一つである。文面を見る限り、どうやらその進行の草稿と出題写真の候補らしい。そして今これが「没」とされているということは、本番では公開されていない写真ということではないだろうか。内心ワクワクしながら、もう一枚めくってみた。
『第一問 私は誰でしょう』
写っているのは、真面目な顔をして竹刀を組み立てている銀髪の子供。
短い後ろ髪がぴょんぴょんと跳ねている。
『正解:S・スクアーロ先生』
「今とおんなじことしてる……」
髪型が違う事以外はまったく変わっていないらしい剣道部顧問の姿を思い出しつつ、もう一枚めくる。
『第二問 私は誰でしょう』
写っているのは、可愛らしいイルカのぬいぐるみを抱えた男の子。
面影、と言うよりは今とほとんど変わらないその表情。
『正解:バジル先生』
「うわあ、いつのだろうこれ……幼稚園とか?」
バジルとは中学時代からの旧知だが、ここまで幼いときの写真は目にしたことがなかった。次のページを期待しつつめくる。
『第三問 私は誰でしょう』
写っているのは、着物姿で座っている黒髪ツリ目の子供。
この澄ました顔、どこかで見たことがある気がするのだが。
「……あれ?」
思わず声を上げてしまったのは、正解の書かれているべき欄が黒く塗りつぶされてしまっていたからだった。裏から透かしても見えないように修正液ではなくマーカーで塗りつぶしてあるところが憎い。期待を裏切られたような気分になりつつ、仕方ないので次のページへ。
『第四問 私は誰でしょう』
「…………」
めくんなきゃよかった、と綱吉は後悔した。
写真の中で、栗色の髪の子供が犬に顔を舐められて半泣きになっていた。
どっから持ってきたこんなの…と内心毒づきながら、見なかったことにして次のページをめくった。
『第五問 私は誰でしょう』
写っているのは、腕いっぱいの花束を抱えた子供。
服装はよくわからないが、ぱっと見では女の子に見える。
しかし、誰だろう、と思考を巡らせるが思い当たる人物がいない。
『正解:桔梗さん(購買部)』
「へえー……って、ええええええ!?」
あの化粧を落として小さくしたらこうなるのか、と思ったが口には出さなかった。何で購買部の人の写真載せてんだよ許可取ってるのかよとかは突っ込むのをやめた。そしてページをめくった。次が最後らしい。
『第六問 私は誰でしょう』
写っているのは、黒髪の子供。
大きなウサギのぬいぐるみを抱いて眠っている。
ウサギの耳をしゃぶっているあたりが、何とも幼く愛らしい。
誰だろう、と正解を見ようとして————見られなかった。
肩越しににゅっと伸びてきた手が、綱吉の手からファイルを取り上げていた。
「…え……」
冷や汗。
ぎこちない動きで首を後ろへ捻ると————
「……見たな……………」
廊下の窓からの夕日で逆光になった、背後に佇む黒い大きな影……その紅い双眸がこちらを睨んでいた。
「………ぎゃああああああああああああああ!!!!!!!!!」
暗転。
———その後の顛末。
悲鳴を聞いて飛んできた獄寺が目にしたのは、失神した綱吉と、苦い顔でそれを見下ろしている社会科主任——XANXUSだった。
「おい、何があったんだよ?」
「こいつが俺見て勝手にぶっ倒れやがったんだ」
ムスッとした顔で、倒れてピクピクしている綱吉を顎でしゃくる。
「はあ?」
釈然としない顔をしつつ、とりあえず綱吉を助け起こす獄寺。揺すってみたが、目を覚まさない。
「十代目? 十代目……駄目だ、完全に気絶してる」
「保健室に預けてくればいいだろう」
「じゅうだいめ〜? ……仕方ねえか」
頬をぺちぺちと叩きながら呼びかけていたが、依然として気絶したままの綱吉をよっこいせと背負うと
「……もしかして十代目…それを?」
XANXUSが持っていたファイルを見て、言う。XANXUSは答えない。
「それ、確か雲雀権力で没になったんだよな。理事長は残念がってたらしいけど」
「…何で知ってんだよ」
「山本から聞いたんだよ」
「何であいつが知ってやがる……」
「スクアーロに聞いたとか言ってたけど」
「……あンのカスザメ……」
不動明王顔負けの表情でファイルを握りしめるXANXUSから目を逸らしつつ、心の中でスクアーロに合掌してから、綱吉を落とさないようにと背負いなおした。
「あー…まあ、別にいいんじゃねえの? ウサギのだろ? お前、フツーに可愛——」
「てめえも保健室行くか?」
「いや、遠慮しとく」
そこまでムキにならなくても、と内心可笑しく思いつつ、ウサギのぬいぐるみを抱いていた子供の成長した姿を一瞥してから放送室を出ていった。
「…………」
取り残されたXANXUSは、ファイルをもとの黒い箱に放り込み、それを棚の一角に乱暴に押し込んで、放送室のドアを閉めた。
「……誰が可愛いだ…!」
放送室の机の上にDVDを放置したまま気絶してしまい、結局取ってこられなかった校長先生が、にこにこしながら迫ってくる鬼教師から学校中を逃げ惑ったのはまた別のお話。
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