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なまもののさけび

とりあえずつらつらとかきつらねます

05.29.04:48
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  • 05/29/04:48

11.14.18:37
執筆順リク小説その1

「華胥受胎」のリクエストありがとうございました。
書きかけは他にもまだありますので、これをというものがありましたら拍手で是非お願いします。詳しくは一番上(11/17付)の記事。



注意:ダークというより色々鬱屈。受胎願望注意。




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「華胥受胎」




 こうしていつも見る夢の中の自分はいつも幸せそうだったから、夢を見てそして目覚めるその度に、次に生まれてくるときは、と彼は思った。

 決して今の自分自身に不満があるわけでもないし自分の境遇に文句があるわけでもなかったけれども、あんな風に笑う自分の姿を夢以外では見たことがなかったしそれを見て無性に悲しくなったのもやっぱり初めてだったから、夢が気になって仕方がなくてあれこれと考えた結果、自分はきっと母親になりたいのだろうという馬鹿馬鹿しい結論に辿り着いてしまって、自分なりにも一生懸命考えた結果であったからそれを笑い飛ばすにも飛ばせず、自分は男としてどこか欠陥があるのではないかと柄にもなく悩んだりしたが、最終的に自分はおそらく他の男より少しばかり母性が強いのだという何とも言い難い仮説を立てて、納得したつもりになっておくことで自己完結へと至った。

 道ばたに捨てられている子猫を拾ってきて世話をした。目も開かないような小さな猫が手の中で丸くなって眠るのを眺めた。粉ミルクを買ってきて、小さな哺乳瓶に入れて湯で溶かし、人肌まで冷ましてから与えてやると、子猫は始めのうちは警戒して拒んだが、やがて空腹に耐えられなくなったのか小さな口と前足を動かして懸命に乳を吸った。あたたかな子猫の体温と息づかいが手のひらを伝わってくるのが心地よく、幸せだった。子猫が日に日に大きくなっていくのを見るのが楽しみだった。開け放たれた窓から猫が出て行ったきり帰ってこなくなった日まで、体の芯が冷えることはなかった。

 重い体を投げ出して、胸に右手を、腹に左手を当て、皮膚を押し上げ振動を伝える血流を、脈動を感じた。心臓から押し出され大動脈を通過した血液が腹部に到達するまでの僅かなブランク。血流が血管を通り左胸から腹部へと至るまでの距離が生み出す脈拍のタイムラグ。それはまるでこの己の体を司る心臓とは異なるもう一つの心臓がその内側に存在しているような感覚で、たとえそれが元々皮下脂肪が少ないことやここ二日ほどまともな食事を摂っておらず胃が潰れた状態になっていることが原因だったとしても、もう一つの生命を腹に宿しているような錯覚に酔い痴れるのには十分で、脳に養分が行き渡らずぼんやりとしたままの意識がそれに拍車をかけていた。栄養失調寸前になってやっと自分は未だにこの身一つでなおかつそれはこれから一生変わることはないのだという現実を再認識せざるを得ない状況になった。

 四方を白い壁に囲まれた寝台の上で、同じく白くて無表情な天井に見つめられながら、まどろみの中で自分があの重くて厚い扉の向こうへと運ばれていく様子を夢見た。あの扉はある者にとっては魔法の扉で、入るときは一人なのに出てくるときは二人もしくはそれ以上に増えているのだった。しかしたとえ自分があの中に入ったとしても出てくるときにもう一人を連れてくる資格などないことはわかりたくないほどわかっていた。どんな痛みや苦しみにも耐えてみせますと天地神明に誓ったとしてもそれは不可能なことであるのだとわかりたくないほどよくわかっていた。

 どんよりとした闇に沈んでいく意識の中で、もう何度目になるのかわからない夢をみた。すでに数えきれないくらいあの夢ばかりを見ていることにいまさらながら驚いた。何回訪れたかわからないその場所は、いつもと同じようにふわふわとあたたかく、言い様のない心地よさに満ちあふれていた。目の前に見える自分が胸に抱いた小さくも確実なその重みにそっと愛おしげに頬を寄せて微笑んでいるのを眺めながら、こんな夢を見るくらいならという諦観した希望を静かに吐き出した。

 こうしていつも見る夢の中の自分はいつも幸せそうだったから、夢を見てそして目覚めるその度に、次に生まれてくるときは、と彼は思った。




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